防水対応のスマホが普及したことで、ワイヤレスのBluetoothイヤホン・ヘッドフォンのユーザーが多くなりました。
Bluetoothイヤホン・ヘッドフォンを通しての音楽視聴において、必ず知っておきたいのが「コーデック」という言葉です。
というのも、同じ価格帯のイヤホン・ヘッドフォンであっても、コーデックの違いによって音質の差が生まれてしまうことがあるから。
この記事では、初心者ユーザーにも分かりやすいように、オーディオにおけるコーデックについて解説しました。
コーデックとは、音声データの圧縮形式のこと
コーデックとは何か。
その答えは、
音声データの圧縮形式
です。
「これだけ書かれても分からないよ!」
という方のために、もう少し詳しく説明していきましょう。
コーデックが活躍するのは、スマホやウォークマンなどのオーディオ再生端末から、イヤホンやヘッドフォン側に、ワイヤレスで音声データを送信するときです。
再生端末に保存されている音声データは、ワイヤレスで送るには大きすぎるため、そのままではデータをイヤホン・ヘッドフォン側に送ることができません。
そこで、音声データを圧縮することが必要になります。
その圧縮方式はいくつかあるのですが、方式の総称がコーデックというわけです。
コーデックの名の由来は?
英語ではCodecと表記し、COmpression/DECompressionの略です。
和訳すると「圧縮/伸長」の意味になります。
※動画におけるコーデックというもあるのですが、ややっこしくなってしまうので、ここでは説明を割愛します
コーデック次第でBluetoothイヤホンの音質が変わる!?
Bluetoothイヤホン・ヘッドフォンが対応しているコーデックには
- SBC(すべての端末が搭載)
- AAC(主にApple製品が搭載)
- aptX(主にAndroid端末が搭載)
- LDAC(主にソニー製品が搭載)
といったものがありますが、それぞれ音質が異なります。
SBC<AAC≦aptX<LDAC
※右のものほど高音質
音質の良いコーデックを使うには
また、コーデックを使うためには再生端末とイヤホンが同じコーデックに対応している必要があります。
つまり、最も音質の良いLDACのコーデックを使いたいと思ったら、LDACに対応した再生端末(ソニーのウォークマンなどがこれに該当します)と、イヤホン・ヘッドフォン(これもほぼソニー製品のみです)を揃える必要があるのです。
再生端末が音質の良いコーデックに対応していても、同時に使用するBluetoothイヤホン・ヘッドフォンが同じコーデックに対応していなければ、音源再生そのものは可能ですが、使われるコーデックは最も音質の悪いSBCになってしまいます。
Bluetoothイヤホンのコーデック4種+αを紹介!
コーデックによる音質の違いについて書いたところで、それぞれのコーデックをもっと細かく見ていきましょう。
すべてのBluetooth対応端末が搭載する「SBC」
SBCの特徴
- Bluetoothに対応したすべての端末が必ず搭載する。
- 接続の安定性を最優先にしているため、データの圧縮率が高い。
- 音質の劣化が大きく、特に高音域が弱い。
- 無音時にはノイズが入る。
- 音の遅延が起きやすく、動画視聴には不向き(0.2秒程度、音が遅れる)。
すべてのBluetooth対応端末が搭載しているSBC。
音質の劣化が大きいことから、高音質な音楽を楽しみたいのであればあまり向いていません。
とはいえ、最近では、SBC対応のイヤホン・ヘッドフォンも進化しています。
ほかのコーデックに対応したものにはかないませんが、安い価格帯で比較的音が良い製品もあるので、出費を抑えたいのであれば十分選択肢に入ります。
一方で、5000円程度の出費が可能であればAACやaptX対応のイヤホン・ヘッドフォンが手に入るので、予算に合わせて選択してください。
なお、Bluetooth対応の再生端末やイヤホン・ヘッドフォンを購入するとき、商品のパッケージなどに対応コーデックの記載がなければSBCのみ対応と考えてよいでしょう。
Apple製品が標準搭載するコーデック「AAC」
AACの特徴
- iPhoneやiPad、Macなど、Apple製品のBluetooth対応端末が搭載している。
- iTunesで配信されている曲の音質を維持できる。
- 遅延が少なく、動画視聴時でもストレスを感じにくい。
- 音声データはかなり圧縮されるが、体感できる音質はSBCより良い。
あなたがiPhoneユーザーであれば、切っても切り離せない関係にあるコーデックがAACです。
iPhoneを通して音楽を楽しむ方は、AACに対応しているイヤホン・ヘッドフォンを探しましょう。
AACを搭載している再生端末はApple製品のみですが、AAC対応のイヤホン・ヘッドフォンというと結構な数があります。
Amazonで検索すれば価格帯は5000円前後のものから市場に出ているので、あまり大きな出費をせずとも、音楽を楽しみやすい環境を整えることが可能です。
Android端末が搭載する「aptX」とその派生
aptXの特徴
- 主にAndroid製品が搭載する。
- SBCやAACと比べて圧縮率が低いため、音質は高い。
- 遅延が少なく、動画視聴時でもストレスを感じにくい。
- 高性能な派生コーデックがある。
Android製品が搭載するaptXは、AACよりも高性能といえるコーデックです。
音声データの圧縮率がSBCやAACと比べて低いのが最大の特徴で、イヤホン・ヘッドフォンに転送される音声データの大きさは、AACの約1.5倍です。
また、音の遅延は0.06秒程度と、SBCの3分の1。体感ではほぼないに等しいものとなります。
Androidユーザーであれば、多少の出費をしてでも、aptX対応のイヤホン・ヘッドフォンに手を出すことをおすすめします。
なお、aptXには、さらに高性能な派生コーデック、aptX-HD、aptX-LLが存在します。
サクッとではありますが、下で解説しますね。
ハイレゾに対応した「aptX-HD」、超低遅延の「aptX-LL」
aptX-HDの特徴
・ハイレゾ再生端末や、Androidスマホの一部が搭載している。
・音質の高いaptXと比べて、1.5倍ものデータ転送量を誇る。
・遅延はaptXより大きめだが、SBCよりは少ない。
・CD音源よりも高音質なハイレゾ音源に対応したコーデック。
aptX-HDの特徴は、なんといってもハイレゾに対応していることですね。
オーディオメーカーのオンキヨーが発売したスマホGranbeatシリーズなど、ハイレゾ対応のスマホなどに搭載されています。
Granbeatシリーズはオーディオファンからの支持も強く、Amazonレビューは星4.4とかなりの高評価。
発売から時期が経ったいまでは6万円以下で購入可能なので、SIMフリースマホでハイレゾ音源を楽しみたい方にはおすすめです。
さて、続いてはaptX-LLの解説です。
aptX-LLの特徴
- Android8.0以降のスマホが一部搭載するコーデック。
- LLはLow Latencyの略で、最も遅延の少ないコーデック。
- 再生端末も、イヤホン・ヘッドフォンも対応しているものが少ない。
apt-LLのウリは、とにかく低遅延であること。
理論的に、その遅延は0.04秒以下と、体感しようとしても困難なレベルです。
ただし、再生端末がAndroid8以降の新機種に限られてしまうのが大きな難点。
対応しているイヤホン・ヘッドフォンも少ないため、お使いのスマホがaptX-LLに対応していた場合に検討してみるのがよいでしょう。
ソニーが誇るハイレゾ対応コーデック「LDAC」
LDACの特徴
- ソニーのスマホやウォークマンに搭載されている。
- ハイレゾに対応し、通信環境次第ではSBCの3倍ものデータ量を転送できる。
- 遅延が大きく、動画視聴には適さない。
国内におけるハイレゾ推進の旗頭的なメーカーであった、ソニーが開発したコーデック。
飛び抜けた音質の高さが大きな長所で、Bluetooth通信環境の良い屋内での音楽視聴には最適です。
屋外ではデータ転送量が落ちる傾向にはありますが、それでもほかのコーデックをしのぐだけの実力を持っており、さすが天下のソニーといったところでしょう。
なお、Android8以降のXperiaシリーズをはじめ、現在のソニー製品であれば多くがLDACに対応しており、選べる製品の幅が広く使用環境を整えやすいのが特徴です。
全体的に対応製品の価格が高くなりがちではありますが、音にこだわりたいソニー製品のファンの方なら、利用して損のないコーデックといえるでしょう。
Bluetoothイヤホンを買うときはコーデック確認が必須
ここまで説明してきたように、コーデックはBluetoothイヤホン・ヘッドフォンを買う際に必ず確認すべき項目です。
価格が3000円程度までの安い物であればSBCのみ対応ということがほとんどなので気にせずともよいですが、それ以上のものを買うとなればチェックしておいて後悔しないでしょう。